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140字のSSを毎日書く遊びをしていました。


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•あの晩について、わたくしから申し上げることは何もございませんわ。屋敷の亡霊が悲鳴を上げて五月蝿かったから、寝室を締め切って寝ておりましたもの。 亡霊をご存知ない?古いお屋敷にはつき物の、風の通る音が鳴らすというあの耳障りな騒音。--あら、探偵さん。亡霊にそんな甲斐性ありませんわよ。

• 「でも酷いと思わない!?」汗をかいたビール瓶をテーブルに叩きつけるように置き、身を乗り出してわめいた。「アタシがどれほど苦労したか…っ!それをあ いつときたらポイッと軽々と!あぁ腹立つ!!」「それは大変だったね」「大変なんてもんじゃないわ!…締め殺してやりたい」一転して、低く呻く。

•下手な嘘を指摘したり、誤解を訂正することなく、適当に話を合わせて目を伏せる。声を上げて注目を浴びたくないし、人前でそんなことされたら相手も不快 だろうから。けれどもし自分に覚悟や勇気があり、ウエに目をつけられて将来を棒に振ることを恐れない強さがあったなら。きっと未来は良くなる筈だ。

•地下道にじぃっと標識を見ている人がいた。通り過ぎるときに顔を覗こうと見遣る。しかしそれは人ではなく、壁に描かれた騙し絵だった。わけもわからず左 右を見回したが、ちょうど他に誰もいない。毎日ここを通っている人はとっくに正体を知っていて、無視して歩いているのだろうか。こんな変なものを?

•切り取り線で切り取り、裁断機でシャクシャク削って、断面がひしゃげた紙束。やすりでならして、くるくる巻いて、切り落とした方の紙を輪ゴムの代わりに 巻きつけて、それをセロテープで留めて固定。その丸めた束を大きめのビニール袋に入れてだぶついた部分を折り込み、これもまたセロテープで留める。

•刺身を醤油に浸してふと手を止める。「魚にも痛覚があると証明されたんだよな」「で?」「もう頭を落としてあるからこっち側をどうしようと関係ないけど さ」「つまり?」「『いただきます』を言い忘れた言い訳」「いいから黙って早く喰え」急かしているつもりか、湯気を立てた緑茶がごとりと置かれた。

• 「あのぅ、すみません。マンドラゴラを1つ買いたいのですが」と声をかける。それに応じて店員さんが後ろの引き出しへ手を伸ばしたので慌てて止める。「い え、抜く前の、苗か何かでほしいのですが」「でも危ないですよ?」親切なこの店員さんへ正直に言うべきだろうか。自殺するのに使いたいだなんて。

•今日は朝から最悪の日!茹で卵はボロボロにしてしまうし、食パンは黒焦げ、歯磨き粉も洗面台にこぼして、電車は遅れて乗り換え失敗。でも今日のうちに最 悪を消化したら明日は良い日になるかもしれない。それとも昨日までの良かった日のツケを今日清算してるのかも?致命的な失敗でないなら全部大丈夫!

• 寒いくらいに濃い日陰で、ひょろ長いヒマワリが細々とバケツに根を下ろしていた。まだツボミもないから本当は別の植物なのかもしれない。でも直感的にヒマ ワリだと思ったから今日からそれをそう呼ぶことにした。少し運べば日当たりの良い場所もあるけど、重くて大変そうだったのでずっとこのまま。

•退室して行く皆を見送り、居心地悪く立ち尽くす。扉が閉まり振り返ったその人は先程までとは打って変わって、他人行儀な微笑を浮かべた。「お父様はお元 気?こんな大きな子供がいるなんて私も歳ね」「父は田舎で呑気に暮らしています。最近めっきり老け込んでもっと大きな子供が居るように見えますよ」

•気にしなければいいのに、と言って小窓を開けた。ここから海は見えない。空と屋根と絵のように立派なカモメが1羽。ここはいつ来ても晴れている気がす る。干してある雨傘と長靴が、昨日の雨を如実に示しているけれど。窓を開けるときはいつだって晴れだ。君が決まり文句を言う、「ね、外へ行こうよ」。

•生き別れの兄弟が居るなんて話、ある訳がなかった。ましてや双子など。「はじめまして、おにいさん」と目の前でニコニコ愛想笑いするこいつが、自分と瓜 二つの顔を…は言い過ぎにしろ、とーっても、良く似ているのはどういうわけだ。妹が選んだ義弟が、実の兄である俺にそっくりだなんてそんな馬鹿な。

•似ても似つかない化け物が、自分は本物だと叫んでいた。探しても探しても本物は見つからなかった。きっとこの化け物に喰われてしまったんだ。化け物は 斬って捨てた。仇討ちにしては呆気なかった。その化け物の血肉にまみれていたせいで、味方の火炎放射に巻き込まれた。私の叫びは聞こえていないのか?

• 「どうかな?今日のは自信作なんだ☆」と上機嫌で妻は次々と料理を並べる。盛り付けのセンスがズレているのは愛嬌のうちだ。この努力を僕は有り難くいただ く。「うん、美味しそうだね」と応えて箸を持つ。心の裡で迷い箸が机の上で42.195kmを走り始める。妻の料理には味が無い。どれも不味い。

•かねてからの予定通りに、彼女に振られた。というのも、これまでは田舎の両親やその他お節介な人達に、結婚をちらつかせるための彼女が必要だったのだ。 彼女の方にはこちらの意図を伏せて、できるだけ良い思いをして貰えるように勤めた。例えば「仕事と私どっちが大切?」と問われたら即答したりとか。

•都市伝説の口裂け女に遭遇した。「私、綺麗?」の決まり文句でマスクを取った。そこは住宅街の暗い夜道で、良く見えなかったので街灯の下まで連れて行 き、まじまじと顔や服装を検分した。彼女は恥ずかしそうに、「どうかな?」と顔色を窺ってくる。正直に答えるべきか、お世辞を言うべきか、それとも。

•被験者募集中の掲示の法外な報酬に釣られて連絡を取った。部外者に詳細は話せないが命の危険は無い、と主張される。問答を続けても埒があかず、守秘義務 に纏わる誓約書に印鑑を押して、改めて説明を受けた。拘束時間の長さ、行動の制限、それらが高額報酬の所以だ。画面に先輩被験者が表示されている。

•「だからー、要らないなら買わなきゃいいじゃん?って言ってやったのよ。でも相手に悪いからって。別に向こうは売れたり売れなかったりが日常でしょ?欲 しい物を売ってるときに買えばいいだけなんだから」「でも売上足らない月末とかだと有り難いなぁってっことでそういうカモは狙い撃ちしてるわww」

•一方的に言い立てるばかりで、あいつは返事を聞きやしなかった。そこに悪気が無いのは分かってる。返事を貰うことに慣れていないのだ。その上、拒絶の言 葉が恐いのだ。それなりに時間を共有したから、あいつの考えそうなことは分かってるつもりでいる。いつだって極端で大袈裟で唐突な、大馬鹿野郎め。

•『女であろうと努力する者だけが女となるが、男は男であることから逃れられない』とホワイトボードに教授が書いた。私たちはそれを書き写す。教授は高齢 で、ジジイなのかババアなのか見分けがつかない。偉い先生だから男だと漠然と思い込んでいたけど、若い頃は女だったのかもしれない。

•小さな可愛いアレンジメントの飾り花。満員電車で潰された。ビニール袋の底にに溜まった赤い汁。折れて突き刺さる竹。手作りだと言っていた。ゴミ箱へ棄 ててきた。翌朝、ゴミ箱の周りでカラスが死んでた。夕方、近くのコンビニで聞くと、毒のある花が捨てられていたせいらしい。あの花は毒だったのか。

•夢の中に街を飼っている。それは育ち、増殖し、呼吸している。そこがある日、怪獣に襲われた。けれど墜落して目を覚ました。あの街の他に、夢は街を持っ ていない。どこか遠くの街や人が、助けてくれたりはしないのだ。心配で眠る幾つもの夜、夢の街を訪れることなく。次に見たとき、夢は息絶えていた。

•老いた母が目ざとく私の左腕のそれを発見した。「どうしたの?本物の木?」と彼女がしきりに気にかけるのは、腕の数珠。これは神宮で買った本物の数珠だ よと説明するも母は私の話なんか聞いちゃいない。食い入るように数珠を見つめる。欲しいのか、スピリチュアルな何かを感じて魅入られてしまったか。

•純白のアジサイが、ある日突然朱に染まった。「アジサイの下には死体が埋まっている」と同居人が言うから心配になって、夜中に深々と穴を掘ったら案の 定。冷蔵庫に大切に保管していた僕の死体が腐っていた。朱色の花は時間を経て黒ずんでいく。損なわれていく死体に比例してアジサイが干からびていく。

•朝から風邪で身動きが取れない。きっと熱があるんだ。手を伸ばして届くところに、買ったばかりのペットボトルが2本、レジ袋のまま放置されていなけれ ば、脱水症状でヤラれてたに違いない。新聞が放り込まれる他に来客の予定も外出の予定もない今日、助けは来ないだろう。けれどピンポーンと音が鳴る。
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